とある男の秘録集17

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とある男の秘録集17


 

夜、パソコンの前で動画をアップしながら、私は最近話題になっていた一冊の本を読んでいた。 本の題名は出さないが女性同士の物語だ。「欲望」と「消費」。その言葉が、やけに胸に残った。私の仕事は、女性の卑猥な動画を編集して投稿することだ。「これ、伸びるから優先な」「感情はいらない。数字だけ見ろ」おじさんは、いつもそう言っていたことを思いだす。最初は、その偉そうで冷たくて、人を道具みたいに扱う態度が嫌いだった。顔を見るだけで、胸の奥がざらついた。それなのに、いつの間にか私は、その人の一言で一喜一憂するようになっていた。褒められれば安心して、無視されれば眠れなくなる。気づけば、画面の向こうの女性たちを、「素材」や「商品」としか見なくなっていた。その本の中では、女たちは堂々と食べ、欲し、選び、生きていた。自分の人生を、自分のものとして抱きしめていた。なのに私は、誰かの欲望を並べて、誰かの評価を食べて生きている。ページを閉じて、画面を見る。顔のいい女。体のいい女。セフレによさそうな女。嫁にしたそうな女。結局、男たちに無茶苦茶にされ、数字に変えられる人生。そして、それを淡々と押す私の指。いつからだろう。私は、おじさんみたいになりたいと思うようになっていた。強くて、冷たくて、何も感じない人間に。そうなれたら、この仕事も、この毎日も、きっと楽になると思っていたのか。でも、本を読み終えた今、その考えが、少しだけ怖くなった。私はまだ、ここにいるし、パソコン画面の前で迷いながら、それでも指を止められずにいる。それでも、「おかしい」と思えている自分が、 まだ残っていることだけが、 小さな救いです。

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